それぞれの想いは「おうちごはん」と一緒に。よしながふみ「きのう何食べた?」

よしながふみ「きのう何食べた?」

よしながふみさんの「きのう何食べた?」

この漫画が実写ドラマ化して、沢山の人が見る世の中が来ようとは…

実写化を待ち望んでいた原作ファンの私ですが
ケンジがケンジにしか見えない内野聖陽さんや
「あー!そういう解釈か!」というシロさんを見せてくれる西島秀俊さんのお二人。
しっかり原作のレシピを再現してくれる、おいしそうな料理の数々を見ながら、毎週末ほっこりしています。

「LGBT」という言葉を目にする機会が増えた昨今ですが、この漫画はそんな単語なんぞ全く聞くことのなかった2007年に第一巻発行。

弁護士の「シロさん」と、美容師の「ケンジ」はゲイ同士のカップルで、一緒のマンションで生活する仲。

色物な描写は全くなく、40才を超えたゲイカップルの日常(しかもほとんどが食事作ってるか食べてるシーン)を淡々と描いた漫画です。

きのう何食べた?の登場人物シロさんとケンジ

社会的な場では、カミングアウトしていない堅物のシロさん。
職場でもカミングアウトしているオープンで甘え上手なケンジ。

料理担当のシロさんは、日々うちで食べるごはんの献立を考え、帰り道にスーパーに寄り
うちにある食材のこと、食費のこと、栄養のバランスも考慮に入れて、料理を作る。
それはまるで、主婦が毎日の料理を家族に作るのと、何も変わらない。

男性が料理をしているからといって
その日の作る分の食材だけをその日に買ったり
冷蔵庫にある食べ物の賞味期限を気にせず、ダメにしちゃったり
好きなモノを好きなだけ作ったり(肉ばっかとか)
オリーブオイルぶっかけまくったり…

なんてこと一切ないですよ!!

倹約家でもあるシロさんなので、安い品を求めてスーパーをハシゴしたり、冷凍食材でやりくりしたりと、その様子は堅実な主婦そのもの!!

しかも、健康のことも考えて、ごはんの量をあまり食べないように、おかずの品数を多くしたり
(大体【主菜+ごはん+汁物+副菜2品】のことが多い)
おかず同士の味付けがかぶらないように気を遣っていたりと、主婦の私もここまでできん!という細やかさ。

なので、普通におうちごはん作るときに、すごく参考になる漫画なんです。
変にハードルの高い調味料とか登場しないし、ベーキングパウダーでさえ、シロさんが使い切るのに難儀して、あれこれレシピを求める描写もある位。
(作者のよしながふみさんが女性なので、それだけ繊細な描写ができるのだと思いますが)

食いしん坊の私はレシピ本のように愛読しておりますよ…

よしながふみ「きのう何食べた?」

そんな「兼業主夫」のシロさんが、日々料理をする姿に「そうそう!」と共感しまくってしまうからこそ
ただ、自分と同じ性別の人をパートナーに選んだ。
そのことだけで生じる違いに、思わず考えさせられてしまうのです。

  • 二人の間に子どもは生まれない
  • 親に孫の顔を見せられない
  • 職場でパートナーの話を具体的にできない(シロさんの場合)
  • 二人で一緒に堂々と行けない場所がある
  • 友だちと食事をするにも場所を選ぶ必要がある

などなど、大小様々な困ったことが起こってしまう。

日常生活を誇張することなくしっかりと描いているから、その分、異性愛者との違いが浮き彫りになる。

だからといって、別に同性愛者だけが大変!なんていう気もさらさらないこの漫画。
シロさんの主婦仲間として登場する、ごくごく普通の主婦に見える「佳代子さん」にも、とある事情があったことが途中で分かったり。

毎日、ごはん作って食べて。働いて眠って。

誰もが送る、それぞれの「普通の生活」にそれぞれの悩みや事情があること。
誰かと一緒のごはんも、ひとりで食べるごはんも、それぞれの気持ちを優しく包み込んでくれるもの。

そんなささやかだけど、大切なメッセージを、淡々と届けてくれる漫画なのです。

「きのう何食べた?」のドラマは、テレビ東京:毎週金曜深夜0時12分放送中!
テレ東見れないエリアでも「TVer(ティーバー)」や「ネットでテレ東」などで、最新話が見れます。

▼公式サイト
https://www.tv-tokyo.co.jp/kinounanitabeta/